日本の金融ビッグバンも本格化し、いよいよ個人の資産運用のリスク管理が問われる時代になってきた。本書では6人の金融スペシャリストに日経金融新聞編集長関口元朗がインタビューする形式で、リスクも含めたこれからの時代の資産形成の在り方を考察している。 野村投信販売、国際投信委託などを経て数々のファンド開発に携わった上田明之による「投資信託の王道」では、日本の投信市場の今後とファンド選びについて論じられる。格付機関で生損保を中心に金融機関の格付けを行う植村信保による「生保破綻に備える」では、破綻の相次ぐ保険業界の経営状態の分析や、健全な会社を見分けるポイントなどについて助言する。続く「生命保険をどう選ぶ」ではFP(ファイナンシャル・プランナー)の畠中雅子が安易な生命保険の見直しや解約に警鐘を鳴らすとともに、個人に合った保険選びのコツを伝授。 約50年にわたって証券業界で活躍し、現在日本テクニカル・アナリスト協会名誉会員である松本和男による「逆境に勝つ株式投資」では、株価形成の基礎である株価と景気の関係を中心に株式市場の今後について述べられている。さらに「『自立の時代』のマネープラン」では数々の金融機関を経て現在三和総合研究所の主任研究員を務める山崎元が、「不確実」な時代の生き方も含めた資産運用の方法について述べている。そして最後の「リスクとは何か」では、ナレッジリンク代表取締役、中央大学経済学部教授の高橋文郎が投資理論という学術的な立場から株式市場のリスクについて論じている。(大角智美)
気になる専門家の「マネー設計」
投資の勘どころだけでなく、日本の投資環境が抱える問題点にまで話が及ぶ。気軽に読める1冊であるが、内容は深い。これから投資をはじめようという人は、本書で個人投資家の置かれている状況を知っておきましょう。そして何より面白いのは、それぞれの専門家が自身のマネー設計を披露しているところ。専門家といえど、いつも成功しているわけではないのですね。やはり大切なのは、これからの時代を生き抜くための「力強い自分」を作り上げるということでしょうか。他の投資指南書や解説書を読んで、ある程度の知識をつけてから読むことをお勧めします。
全てを自分が決定する「自己責任時代」の到来
あなた任せの金融資産の運用、保険加入は既に終わりを告げました。リスクとリターンの関係は比例しています。 どのようなリスク選択をあなたが取るかで、リターンも変わるのです。この本は、そのような選択を迫られたあなたに、選択基準となる一つの指針を与えます。さあ、この本を読んで、金融・保険・投資の「大海原」にこぎ出でてみましょう。きっと、あなたのもとには、大宇宙に包まれたような、大いなる安心感が訪れる事でしょう。
日本経済新聞社
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