スローフードやシンプルライフに通じる一冊
チョムスキー氏の著作を読んだのは本著が初めてだった。発刊直後に読んだのだが、自分のなかで整理ができないまま、わかったようなわからないような印象だった。 言葉は確かに難解になりがちかもしれないが、そんなことよりも自分の生活の中で、氏の主張をどう位置づけたらいいのか考えが整理できなかったからだ。 現代は、経済活動という一見正当な社会活動が、グローバリズムとかグローバルスタンダードという言葉に載って際限のない広がりを見せている。またこのグローバリズムに載ることが、自らの生活と社会を豊かにし、人々のためになると主張するのが「新自由主義」であり、それを主張するのはアメリカ政府や米系大企業だと。 その一方で、形を変えた搾取が途上国などで起こる。 新自由主義やグローバリズムは、「持てる者は、より多く」、「持たざる者は、さらに手放す」という二極分化を促してしまうと、著者は言う。 鹿児島県地方には、自分の暮らす「四里四方」の飲み物・食べ物を口にしていれば、健康でいられ、かつそれは美味しいという考え方がある。 フランスの農村で発したスローフードと考え方は同じであり、それを経済テーマまで繋げて考えていくことによって、チョムスキー氏の主張にも、初めて頷ける。 私なりに、本書のメッセージを自分の暮らしの中に落とし込んでみることができた。 私は役人や経済学者ではなく、経済の勉強の経験もない、一介のサラリーマンだ。 日頃、お金(特にローンかな)に追い回されるのはイヤだと感じている。 しかしその一方で、美味しいワインも飲みたいし、欲しいものもあるから、身の丈以上にお金が欲しいとも感じる。とても矛盾している。 そんな私に社会経済という面から、自分の暮らしを整理して考えるきっかけとなってくれた本書には感謝している。 スローフードやシンプルライフといったことに興味のある方にも読んでいただきたい一冊です。
さすが機械翻訳
チョムスキーのアメリカ批判の経済版といえよう。市場原理主義と恐れられる新古典派経済学は、あくまでも弱肉強食、強い者と持てる者に絶対有利なシステムである。絵に描いたような帝国主義の本質と、その事実に無関心なアメリカのマスコミ。NAFTAに代表される中南米・東欧・東南アジアそしてアフリカの貧窮の上に、西側諸国の現在の繁栄はある。現在の貧窮国もかつては繁栄していた。そういった忘れられた過去についての指摘は、世界史の常識でありながら意外であった。「民主主義の伝道」の美名の下に、資源国を侵略し、その人的犠牲の上に成り立つアメリカの歴史的体質がとてもよくわかる。難を言えば、翻訳がどうにもいただけない。特に序文は近来まれに見る難文だ。より多くの人に読んでもらいたい内容だが、その点が非常に惜しまれる。
内容◎、翻訳が△。
内容はチョムスキーのほかの著書に並ぶ大変意義深いものです。これは9・11の内容ではないですが、チョムスキーのドキュメンタリー映画9・11で見たご本人と同じ、その他いつものチョムスキーの政治に関するアイディア、視点が一貫して展開されている。しかし、翻訳にかなり難点があり、何度か読み返し、原文を想像しながらようやく意味がわかる。これはまだいいが、ほとんど原文の意味が汲み取れない訳文もある。翻訳者はほかにもチョムスキーの訳をてがけているが、この本についてはなぜか読みづらさを強く感じる部分が散見されました。はじめてチョムスキーの政治についての発言などを読む人にはほかの翻訳のしっかりしたものをお薦めします。翻訳に難ありという意味で星4つです。
まだお読みになっていない方、ご参考まで。
同時多発テロ以降、アメリカの一連の軍事行動への警鐘として『9.11』などの本を上梓。ドキュメンタリー映画にも描き出され、最近注目のチョムスキー(本職は言語学者だが、知識人と最近は呼ばれている)。 本書では、自国アメリカへの経済面についての批判が書かれている。 みなさんが本書を読むかどうか決めるにあたり、以下の3点を参考までに申しあげたい。 1点目。本書に書かれている内容は、すべて同時多発テロが起こるよりも以前のもの。クリントンがアメリカ大統領だったころに書かれた雑誌寄稿文を集めたものである。現ブッシュ政権への批判を期待しているみなさんには的外れとならぬよう。 2点目。ドキュメンタリー映画を観る限り、チョムスキーの主張のしかたは至極明確なものだった。だが本になると、どうしてこれほどまでに難解になるのだろうか(翻訳のせい?)。気軽に読むというよりも、気合いを入れて読む本。 3点目。だが、チョムスキーの主張はやはり首尾一貫している。難解さを克服し読み進めるために、「政府+大企業」対「庶民」という対立構図の中で話が進んでいくことを常に意識されるとよいだろう。
老いることを知らないのかこの人は
この人は,言うアメリカ資本主義は危機(私が書評で書いたのだが)でなく,葬り去らなければならないと。それは,戦争という非惨な結末で終わるかもしれないと。この人ほど,グローバリリズムの欺瞞を,鋭く指摘した人を,私は,知らない。辺見氏が絶賛するのもうなずける。まさに知の巨人の作品。
文藝春秋
グローバリズムは世界を破壊する―プロパガンダと民意 秘密と嘘と民主主義 抗う勇気―ノーム・チョムスキー+浅野健一対談 テロの帝国アメリカ―海賊と帝王 覇権か、生存か―アメリカの世界戦略と人類の未来 (集英社新書)
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