山の旅 明治・大正篇 (岩波文庫)



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山の旅 明治・大正篇 (岩波文庫)

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言葉の変化

 明治〜大正前期に書かれた日本人の山岳紀を集めたもの。続巻に『山の旅−大正・昭和篇』がある。
 もっとも古いのは明治18年・松浦武四郎の「乙酉掌紀」。もっとも新しいのは大正11年・宇野浩二の「山恋ひ」。どんどん文章が現代語に近付いていくのを読むのが面白い。
 ほかには野中至の「寒中滞岳記」武田久吉「尾瀬紀行」、木暮理太郎「皇海山紀行」など、日本の山岳記の黎明期を見る上では欠かせない紀行が収められており、貴重であった。夏目漱石「二百十日」、正岡子規「旅の旅の旅」、芥川龍之介「槍ヶ岳に登った記」など、文学者の登山記があるのも珍しかった。
 明治期の登山者の文章は非常に物見遊山的であった。ただし享楽的ではない。風景や史蹟を淡々と述べるようなものが多く、江戸時代の旅を引きずっているさまが伺えた。戦前・戦後しばらくの山岳記に見られるような精神修養的な側面も段々と姿を現してくるようで、興味深い。日本の登山の始まりが良くわかった。



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